日本の葬儀の多くは仏式です。「お通夜」「葬儀」「告別式」、そして「火葬」という流れは、地域や宗派により違いはあるものの、聞き慣れた言葉でしょう。
しかし、これらの言葉に聞き覚えがあっても、なかなか葬儀におけるマナーを覚えることは難しいもの。「葬儀、マナー」「葬儀、アクセサリー」といった類いの単語を、多くの人がインターネット上で検索しています。
そう度々出席するものではありませんし、やはり不幸はあって欲しくないですから、葬儀のマナーなど知らない方が幸せという考え方もあるかもしれません。しかしそれでも死はやってきます。それも突然にやってくることがあります。そのような時のために、少しでも葬儀についての知識を付けておくことは無駄なことではありません。
日本では、人が亡くなったその日の夜、もしくは翌日の夜に「お通夜」が行われることが一般的です。「お通夜」は、殯(もがり)という古代に行われていた儀式が起源とされています。この殯は、死者を棺に安置し、腐敗や白骨化が進むことで「死」という現実を受け入れることが、広い意味での目的なのではないかと考えられています。その証拠に、人々は遺体を前にしながらも別れを感じ、悲しみ、死を恐れながら祈り続けたのです。
一昔前は、お通夜はその名前の通り、遺族が遺体に寄り添い一晩を明かすというものでした。家族の一員が亡くなった後、お線香とろうそくの火を絶やさず、自宅で静かに思いを巡らせる家族の時間。それがお通夜の明かし方だったのかもしれません。
現在、一般的なお通夜の形は「半通夜」と呼ばれるものです。夕方の6時頃に始まり、長くても3時間程度で終わります。夜通し亡くなった家族のかたわらにいることもありません。ただ、これには火災防止という点で、斎場では一晩中火をともすことが難しくなったという事情があります。
愛する家族の死を目の当たりにした家族の気持ちに、今も昔も変わりはありませんが、時代の変化や人々のライフスタイルが変化していくと、それに応じて通夜を含む葬儀のスタイルも変化していくということなのでしょう。
人が亡くなると、日本でもっとも一般的な仏式葬儀では、お通夜から告別式までの流れを2日で終わらせます。現在はこの2日間かけて行う葬儀が主流なのは間違いないでしょう。ただ、日本における葬儀はだんだんと簡略化される方向にあり、最近ではお通夜を行わない「一日葬」で故人を送る家も増えてきています。その他、神道の神式葬儀やキリスト教の葬儀など、いくつかの宗教による、様式の異なる葬儀が行われています。
さらに最近は宗教や様式にとらわれずに自由な形で葬儀を行う「自由葬」も多く行われるようになりました。たとえばパーティー形式の「お別れ会」だったり、故人が音楽好きだった場合には「音楽葬」など、さまざまな趣向を凝らした葬儀が行われています。
こうした葬儀の場合、多くは家族や近い関係者だけで密葬をした後に、行われることも多いようです。芸能人などの著名人がなくなった場合には、このパターンで葬儀が行われることがひじょうに多くなりました。
仏式葬儀は、日本で最も広く行われている葬儀のやり方で、日本の葬儀の約9割はこの形だといわれています。日本人は良い意味でも、悪い意味でも「無宗教」だと言われます。日本人は生まれると神社へお宮参りをします。結婚式は教会で挙げる人が少なくありません。そして死ぬときはお寺です。神道、キリスト教、そして仏教で人生の節目を迎える。あまり気にしたことはありませんでしたが、ひじょうに興味深いことです。
最近の仏式葬儀では、先にも触れたとおり、「お通夜」は夜通し行うのではなく、18時、19時頃からスタートして、長くても3時間ほどで終了する「半通夜」が主流です。
「お通夜」は、以前は家族や近親者など、近い間柄の人たちだけで行われることが多かったのですが、最近では少し様変わりしていて、友人やビジネス関係者などが参列することが多くなりました。
「お通夜」に参列する際の服装ですが、お通夜では必ずしも喪服は必要ではありません。男性の場合、黒、紺やグレーのスーツに白のワイシャツ、黒のネクタイといった地味な服を用意するようにしましょう。
精進落としは、葬儀式・告別式のお手伝いをしてくれた人々や、親族、参列者の労に感謝するための会席になります。精進落としへの参加を遺族から求められた場合は、短い時間でも、必ず参加するようにしてください。また、「通夜振る舞い」同様に長居は禁物です。
神式の葬儀は神葬祭と呼ばれます。仏式の葬儀では僧侶が仏事を執り行いますが、それと同様に新式では神職が神道の形式で葬儀を執り行います。
日本人の多くは、神社へのお参りの作法は知っていても、神式の葬儀についてはあまり知らないのではないでしょうか。そもそも仏教と神道は、日本に根付いているといえども考え方が違います。そのため葬儀のやり方も仏式とはかなり違うところがあります。少しでも神式葬儀の作法を知っておけば、いざというときに慌てずに対応することができるでしょう。
神式の葬儀では、仏式の際の焼香に当たる、玉串奉奠をします。その作法は以下のような流れになりますので参考にしてください。
神式葬儀では、仏式でいう香典は「玉串料」といいます。そのためお包みの表書きは「御玉串料(おんたまぐしりょう)」と書くか、他の宗教でも同様に使うことのできる「御霊前(ごれいぜん)」と書くようにしましょう。
キリスト教徒は日本にも多くいらっしゃいます。そのため、日本でもキリスト教式の葬儀はよく行われています。本来、キリスト教の葬式ではお通夜は行いませんが、日本で行う葬儀は、日本の葬儀週間に倣い、お通夜を行っています。また、カトリックとプロテスタントでは少し方式が異なります。
キリスト教の葬儀は「納棺式」から始まります。神父(または牧師)が祈祷して、遺体を納棺します。棺は生花で飾られます。その後、教会に棺を運ぶ前には「出棺式」が行われます。
日本の葬儀は時代と共に変わってきています。仏式で行われる葬儀が、やはり日本の葬儀の大多数ではありますが、神式の葬儀、そしてキリスト式葬儀も各地で行われています。神式葬儀もキリスト式葬儀も、プロセスや作法に違いがあるものの、内容的には仏式と通じるところは多く、それほど戸惑うことはないでしょう。宗教ごとに独特の考え方があるので、これらを理解することが大切かもしれません。
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